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令和6年度入学式 学長式辞


 2つのアルプスが映える駒ケ根の地にも、桜や水仙の花々が咲きほこる季節がやってきました。本学の桜並木の枝垂れ桜も蕾が膨らみ始め、入学なさる皆さんを歓迎しています。
 本日、長野県看護大学に入学された、看護学部85名、看護学研究科博士前期課程16名、博士後期課程1名、合わせて102名の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆様にも心からお祝いを申し上げます。
本日は、設置者として長野県健康福祉部長笹渕美香様をはじめ、ご来賓の皆様のご臨席を賜りました。誠にありがとうございます。日頃から本学をご支援いただき、厚くお礼申し上げます。
 さて、皆さんは中学から高校生の時に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに見舞われました。本来であれば、友人との交流や部活、体育際や文化祭、修学旅行などのイベントに青春を謳歌する時期ですが、未知なる感染症に対する不安や様々な行動制限のなか、思うような学校生活が送れなかったことと思います。しかし、そのような時にも、皆さんは、看護職になりたい、大学で学びたい、自分の可能性を広げたいなどの希望をもち、大学受験を乗り越え、本日の入学式を迎えました。大学院生の皆さんは、社会人として働きながら課題意識をもち、その課題を解決するために大学院で学びたい、看護職として成長し、キャリアアップしたい、看護学の教育研究者になりたいなど、それぞれの希望もって大学院に入学なさいました。コロナ禍の中、将来の希望を見失うことなく、その希望を実現なさった皆さんの意欲と行動に敬意を表します。
 これから長野県看護大学の学生、大学院生として学んでいく皆さんに、私が期待することを2つ、お話しいたします。
1つは、コロナ禍で満たされなかった青春を取り戻し、コロナ禍で得た力を活かしていくことです。
 コロナ禍では、人と会って直接話す機会や一緒に行動する機会が制限されました。マスクで顔の表情がわからない状況での対話や、オンラインで画面越しの対応を体験してきました。このような環境の中で、若い皆さんは、様々な人達と深く関わるためのコミュニケーション力や主体的な行動力が十分養われなかった可能性があります。これからは、満たされなかった青春を取り戻し、人と関わるためのコミュニケーション力や新しい体験に挑戦し、自ら行動する力を養っていきましょう。
 大学では、サークル活動や自治会活動、自分が関心を持っていることに積極的に取り組んでください。駒ヶ根市を中心に上伊那地域では、地域住民による様々なイベントがあり、皆さんの参加を歓迎してくれます。長野県看護大学での学生生活では、多くの人と出会い、様々な話をし、初めてのことに挑戦し行動することを大切にして、有意義な学生生活を送ってください。特に、学生時代の友人は人生の宝になります。
 一方、コロナ禍で得たものは、感染予防に対する意識と予防活動、及び急速に進展したICTへの対応ではないでしょうか。皆さんは手洗いやうがい、マスク取り外しの判断、環境整備などの感染予防行動が身についていることと思います。これから看護を学ぶ際に役立ってきます。オンライン授業やEラーニングなどが発展しました。オンラインによって遠方の人とも交流できるようになり、新しいコミュニケ―ション力を獲得しました。これらはますます発展していきますので、ICTを使いこなして、学修や暮らしに活用していってください。
 2つ目は、“Cool head、but warm  heart”で学修することです。これはイギリスの経済学者であるアルフレッド・マーシャルの言葉です。19世紀のイギリスは産業革命によって繁栄していましたが、マーシャルはケンブリッチ大学の学生たちを貧しい労働者が暮らしているスラム街に連れて行きました。そして、「経済学を学ぶには、理論的に物事を解明する冷静な頭脳、すなわちCool headを必要とする。一方、階級社会の底辺に位置する人々の生活を何とかしたいという温かい心、すなわちWarm  heartが必要だ」と教えたのです。
 これは、看護学にも通じる有名な言葉です。看護学は、人々の生老病死に寄り添い、人々に直接かかわる実践学です。ですから人間の身体や心や行動、社会について体系化された学問や、看護学の理論を学ぶには、冷静な頭脳が必要なのです。一方で、看護の対象となる人々は、ひとり一人が多様な価値観を持ち、異なった人生を歩んでいます。自分とは全く異なる他者の立場に立って、その人が必要とする看護を提供するために、Cool head以上に必要なものがWarm heart、すなわち私たち自身が持つ「温かい人間性」「他人を思いやる温かい心」なのです。
 皆さんの今までの学修は、受験勉強に代表されるように、論理的に正解を求めてきたと思います。Cool headです。しかし、看護実践では、正解が得られにくいことが多々あります。それは、看護の対象となる人は、一人として同じ人がいないからです。自分とは異なる多様な他者への看護を学修するのですから、「正解が得られにくいことに堪え、その人が求めていることは何かを模索し、適切な看護はどのように行うかを創意工夫する、そういう実践力を養ってください。それには、皆さんにWarm heartが必要なのです。
 最後に、本学の教育理念では、学生一人ひとりの可能性が最大限に開花することを目指して、「自立性」と「主体性」を育み、豊かな人間性と幅ひろい視野を養うことを謳っています。私たち教職員は、皆さんを全力で支援していきます。皆さんがそれぞれの目標に向かって、充実した大学生活、大学院生活を過ごし、人として、看護職として、さらに成長なさることを願って、私の式辞と致します。
 ご入学、誠におめでとうございます。

   令和6年4月2日
長野県看護大学 学長 大塚眞理子
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