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在宅療養者と家族のための移行期看護プロジェクト
2.脳卒中者と家族のための生活の再構築に向けた看護ニーズの把握と看護支援モデルの構築
<脳卒中者とその家族の方は、病院を退院された後、どのようなことに困っておられるのか>
☆脳卒中にあわれて入院治療を終え、自宅に退院された方にご協力をいただき、退院して1カ月後、2か月後、3か月後の3回にわたりご本人と介護されているご家族の方に面接調査をいたしました。
その結果、ご本人の方は、後遺症による身体の麻痺があるための、体の動かしにくさを実感するとともに、思い通りにいかない“もどかしさ”を感じていました。また、頭痛、倦怠感、疲労感などの全身症状も感じていました。また、こころの状態では、抑うつ的な傾向がみられました。詳細は、長野県看護大学紀要 第11巻(2009)「脳卒中患者の在宅移行期における看護ニードの検討 −4事例の検討からー」千葉真弓、安田貴恵子、御子柴裕子 をご覧ください。
☆介護されているご家族の方は、ご本人の退院に合わせて自宅での介護を行うために、これまでの生活様式を変えて対応していました。
ご本人の介護において困っていることは、「排泄の介助」「時間を見計らったトイレへの誘導」「食べやすい調理の工夫」という排泄と食事に関することがみられました。食事に関しては、退院1カ月後よりも3か月後の方が負担を強く感じていました。退院直後はしっかりやらねばならないという思いが強いため大変さをあまり感じないのではないかと考えられました。
家族の方の健康状態は、介護を始めてから「体のだるさ」「疲労感」「手足の冷え」などの身体症状を感じていて、時間が経過するに従って感じ方は強くなっていました。また、ご本人のことが気になって「集中できない」「やる気が出ない」というこころの状態への影響もみられました。
このようなことから、介護されているご家族の方も退院後の在宅移行の時期に様々な影響を受けていることがわかりました。
<脳卒中をされた後、自宅や地域社会での生活を送るうえで、どのようなことに困っているのか、また、どのような情報を必要としているのか>
脳卒中にあわれた方の長期にわたる回復過程の支援方法を見出すために、症状や体調、精神心理面、社会参加、家族関係、必要な情報等について、脳卒中者の方々にご協力をいただき調査を行いました。
その結果、脳血管疾患による障害が比較的軽い場合であっても、“しびれ”や“だるさ”などの症状や体調の不調を感じていました。こころの面では、身体機能低下の不安や発病前のように自由に動くことができないことへのもどかしさを感じていました。これらの状況から、慢性的に持続する症状への対処方法や体調管理の方法のアドバイスや学習の機会が必要だと考えられました。
仕事や地域での交流や活動の現状からは、外見では発症前となんら変わらないようにみえても体の調子はまったく違っていることについて、周囲の人には理解されていないと受け止めていて、地域の行事や社会参加の機会があっても消極的になっていました。
家族との関係では、これ以上負担をかけたくないと再発しないよう日常生活に注意を払っていました。
必要な情報としては、脳卒中に関することや回復の過程について知りたいという希望が出されていました。
これらのことから、軽症であるがゆえに医療職者と接触する機会の少ない在宅療養者には、同じ障害を持つ人同士の情報交換や学習の機会が必要と考えられました。
<これまでの研究成果を踏まえて、脳卒中後の生活の道しるべとなるガイドブックを作成しました>
<ガイドブックの表紙>
ガイドブックについてのお問い合わせは下記にお願いいたします。
地域看護学・在宅看護学分野 |
なお、これらの取り組みは学術振興会による科学研究費補助金(平成15-17年度 課題番号:15390674、平成18-20年度 課題番号18592435)によって行われました。